こんにちは。関西を拠点に活動中のロックバンド、Zinnia Staticeのウラタテツです。
DTMで音楽制作を行うとき、様々なエフェクターを駆使します。
その中でも、コンプレッサーというエフェクターがあります。
DTMの世界では、「コンプ」と略されて呼ばれることが多いです。
しかし、DTM初心者の方だと、どのように使うのかわからないかと思います。
僕自身もDTMを始めたての頃は、このエフェクターの使い方がよくわからず、なんとなく使っていました。
正しい使い方がわからないままだったため、仕上がる音源は非常に歪で聴きにくいものでした(笑)
それから、DTMに精通している人に聞いたり、本を読むなどをして調べることで使い方が徐々にわかってきました。
この記事では、僕が長年培ってきたコンプレッサーの役割・効果・具体的な使い方を解説していきます。
そもそもコンプレッサーの役割とは何か?
コンプレッサーの使い方の解説の前に、まずはこのエフェクターの3つの役割について解説をします。
早く使い方を知りたいとお思いでしょうが、このことを知ることで、コンプレッサーの特徴を知ることにつながります。
この特徴を知ることで、コンプレッサーの使い方をより深く理解し、あなたの今後のDTMライフに役立てることができます。
先ずは、下記の3項目をしっかり読んでから、実践項目に移るようにしましょう。
コンプレッサーは音を圧縮する役割がある
コンプレッサーとは、音の強弱を変化させる、ダイナミクス系のエフェクターのことを言います。
元々は、compress(コンプレス)という言葉から由来し、「圧縮」という意味になります。
つまり、コンプレッサーには音を圧縮して、音量を一定にする役割があります。
では、音を圧縮し音量を一定にすることで、どのような効果が現れるのでしょうか?
音量を一定にし、聴きやすい音を作る
歌や楽器の生演奏を録音した場合、どうしても音量にバラつきが生じてしまいます。
どのパートでも同じことが言えますが、特にボーカルやベースなどでは、この音量バランスが不安定です。
無加工のボーカルは、AメロやBメロでは歌声が小さいのに対し、サビでは大きくなったりします。
またベースという楽器は、ダイナミクスレンジの幅が広い特性があるため、音量バランスが不安定になる傾向が強いです。
もしも、一般に流れている音楽でコンプを使用されていなかったら、
音量が急激に上下して聴きにくくなることでしょう。
プロがミックスした音楽は、音量バランスをある程度は一定にしているのです。
これは、ほとんどの場合、コンプレッサーを使用してバランスを整えていると言われています。
コンプレッサーを使えば、大きすぎる音を一定にまとめ、聴きやすい音量にすることができます。
音源全体の、大きく出過ぎている音量を抑えるイメージです。
また、小さすぎる音は、ゲインを上げれば、適切な音量に増幅させることができます。
もう一度申し上げますが、プロが作る楽曲のほとんどは、コンプレッサーが使われています。
そのため、曲中の音量バランスの整った、聴きやすい仕上がりになっているのです。
音圧を上げ、音の迫力を演出する
コンプレッサーを使い、音量を一定にすることで、音の迫力を演出する効果も期待できます。
世に流れている音楽には、ハードロック/ラウドロック/メタルといった、激しいジャンルのものがあります。
このタイプのジャンルの音楽は、一曲を通して音が大きめに設定されており、迫力のある雰囲気を演出していることが多いです。
よく、DTMの世界では迫力のある音のことを、「音圧がある」と言われています。
また、曲に対して迫力のあるミックスを施すことを、「音圧をかせぐ」などと言うことがあります。
コンプレッサーには、この音圧をかせぐための役割を果たします。
ここで、「ボリュームを上げればいいんじゃないの?」と思われる方もいることと思います。
確かにそうすれば、音量自体は上がります。
しかし、コンプレッサーを使わずに音量を上げてしまうと、一曲を通しての音量は一定になりません。
なぜなら、音量が上がっただけで、音そのものには圧縮されていないからです。
DAW(作曲ソフト)で管理する音は、データとして記録しています。
この管理するデータの音量は、最大値が決まっています。
この最大値を超えてしまうと、「音割れ」という現象が発生してしまいます。
「音割れ」が発生すると、元の音が壊れてしまい、ノイズが出てしまいます。
そこで、コンプレッサーの登場です。
コンプレッサーを使えば音量を一定にするだけでなく、音圧をかせいで迫力のある曲に仕上げることができます。
それぞれのパラメーターを設定する
では、コンプレッサーの役割がわかったところで、具体的な使用方法について解説をします。
コンプレッサーというエフェクターには、複数のパラメーターが存在しており、それぞれの数値を設定することで、音に変化をもたらします。
コンプレッサーの主なパラメーター
・スレッショルド(Threshold)
・レシオ(Ratio)
・アタック(Attack)
・リリース(Release)
・ニー(Knee)
・ゲイン(Gain)
これらの数値の設定の仕方を解説していきます。
スレッショルド(Threshold)
スレッショルドとは、「コンプレッサーをどこを基準値にしてかけるか」を決めるパラメータのことです。
コンプレッサーには、音量を一定にする役割があると前述しました。
この仕組みを一言で説明すると、「大きい音を小さくし、小さい音はそのままにする」ということになります。
ここで、スレッショルドの数値を設定した画像を用意しましたので、ご覧ください。
コンプレッサーは、このスレッショルドの数値を基準として動作します。
このため、真っ先に設定することが多いです。
スレッショルドを使うことで、
・どこの音にコンプをかけるか?
・どこの音をそのままにするか?
この2点を設定し、コンプがかかる位置が変えることができます。
ここで、実際にスレッショルドを設定した動画を用意しましたので、そちらをご覧ください。
最初は0dbからスタートしていますが、この時はコンプがかかっていません。
その数値を徐々に落としていくことで、音が変化していってるのが、わかると思います。
この数値が低ければ低いほど、コンプが強くかかります。
全体を通して音が大きいと感じるなら、レベルをやや小さめに設定するなど、工夫して使ってみましょう。
スレッショルドの効果
・スレッショルドの数値が低い = コンプのかかり具合が強い
・スレッショルドの数値が高い = コンプのかかり具合が弱い
レシオ(Ratio)
レシオとは、スレッショルドで決めた音を、どれくらいの比率でコンプをかけるかの役割があります。
数値で言えば、「2:1」や「4:1」という数字で表されます。
下の画像をご覧ください。
-20dbを中心に角が立っていることがわかると思います。
この画像では、スレッショルドレベルを-20dbに設定しました。
レシオは、-20dbを基準に比率をかけることになります。
実際にレシオをかけた動画を用意しましたので、ご覧になってください。
初めは1:1でスタートしました。この時は、コンプはまだかかっていません。
そこから比率を上げていくことで、コンプが強くかかるようになります。
レシオの効果
・レシオの数値が小さい = 圧縮のかかりが弱い
・レシオの数値が大きい = 圧縮のかかりが強い
アタック(Attack)
アタックには、コンプがかかりだすタイミングを設定する役割があります。
スレッショルドで設定した数値を、どのタイミングで行うか?とも言えます。
アタックの数値が小さければ、コンプがかかるタイミングが早くなり、音の立ち上がりを抑えることができます。
このことから、音が柔らかくなったり、極端に設定すれば音を歪ませることも可能になります。
逆に数値が大きければ、音にあまりコンプがかからず、元の音に近いような状態にすることができます。
ただ、数値を大きくしすぎると、あまりコンプがかかりません。
実際にアタックを設定した動画を用意しましたので、ご覧になってください。
アタックの効果
・アタックの数値が小さい = 音が柔らかくなる
・アタックの数値が大きい = 元の音に近い状態になる
リリース(Release)
リリースには、コンプのかかりが終わるタイミングを設定する役割があります。
この数値が低いと、コンプのかかりがすぐに終わるので、元の音量に戻るタイミングが早くなります。
そのため、元の音の余韻を残しながら、コンプをかけることができます。
数値が高い場合は、コンプが終わるまで時間がかかります。
極端に数値を大きくすると長めに圧縮され、音の余韻が無くなり、ギュッと詰まったような音質に変化します。
このことは、残響音を変化させるとも言います。
残響音とは、部屋の壁から跳ね返ってきた音のことを言います。
例えば、広いコンサートホールなどで手を叩くと、「パーーーーン」と音が響き渡りますが、それが残響音に該当します。
残響音は時間が経つに連れて、音が小さくなる特徴があります。
しかし、このリリースというパラメーターを使うことで、その残響音を長く伸ばすことが可能になるのです。
その逆に、反響音を詰まり気味の音にすることも可能になります。
実際にリリースの数値を設定した動画を用意しましたので、ご覧になってください。
リリースの効果
・リリースの数値が小さい = コンプがすぐに終わり、音の余韻が残る
・リリースの数値が高い = コンプが長くかかり、詰まったような音に変化する
ニー(Knee)
コンプレッサーは、スレッショルドの数値を基準として動作していると前述しました。
スレッショルドの数値が下回っていれば、音にコンプはかかりません。
数値が上回れば、音にコンプがかかります。
このことから、音がスレッショルドの数値に近くなると、すぐにコンプがかかり始まることがわかります。
この特性が原因となり、結果として違和感のある音質になる傾向があります。
このことを解消するために、ニーの数値を設定するのです。
このニーの設定には大きく、「ソフトニー」と「ハードニー」の2つに分類されます。
それぞれの画像を用意しましたので、ご覧になってください。
・ハードニー
ハードニーの場合、スレッショルドがかかる領域が前後せず、コンプがかかる位置がハッキリとします。
そのため、コンプのかかり方が極端になり、違和感の原因となるのです。
・ソフトニー
ソフトニーの場合、スレッショルドがかかる領域を前後させます。
そのため、コンプのかかり方が、自然なものになります。
ちなみにこのパラメーターは、角度の様子が膝に似てることから、Knee(ニー)と名付けられたようです。
実際にニーの数値を設定した動画を用意しましたので、ご覧になってください。
ニーの効果
・ソフトニー = コンプが自然にかかる
・ハードニー = スレッショルドの境目に沿るため、コンプが極端にかかる
ゲイン
ゲインには、出力レベルを調整する役割があり、最終調整の時などに使用されるパラメーターになります。
これまで、様々なパラメーターの数値を設定してきましたが、単純な音量はそのままになります。
ここで、ゲインを使い音量の調整を行います。
コンプレッサーの種類によっては、「メイクアップゲイン」や「アウトプットゲイン」などとも呼ばれています。
僕が使用しているLogic Pro XというDAWでは、このパラメーターのことを「メイクアップ」と呼んでいます。
ゲインの上げ方には、2つのコツがありますので、それぞれを解説します。
元の音量に近づける
ゲインの調整は、元の音量に近づけるために使うと効果的です。
具体的な方法は、一度コンプをオフにします。
オフにした状態の音量に近づけるイメージで、ゲインの数値を上げ下げすることです。
適切な数値に設定すれば、元の音量を保ちながら、コンプをかけた音質にすることができます。
ここで、元の音量が小さすぎる場合もあります。
その時は、ゲインを大胆に上げて調節すればいいでしょう。
他の楽器との兼ね合いを考える
単にゲインを上下させて、音量を上げればいいというものではありません。
DAWでは、複数の楽器や歌声を編集することができます。
このため、他の楽器との音量バランスを考えて、数値を上げ下げする時にも使います。
場合によっては、他の楽器を目立たせるために、敢えてゲインを下げ気味に調整することもあります。
あなたの作りたい曲のイメージをしっかり持ちながら、数値を変化させてみてください。
まとめ
コンプレッサーは、ミックスをする際に、音量レベルを調節するための重要なエフェクターです。
この記事内で紹介した、それぞれのパラメーターの設定を参考に行えば、バランスの整ったミックスをすることができます。
コンプレッサーは簡単に音圧を上げることができる、大変に便利なエフェクターです。
しかし、あまり強くかけすぎると、返って元の音の良さがなくなることがあります。
この場合、音の強弱が少なくなり、単調な音に変化してしまうので注意が必要です。
また、ここで解説したことが正解ではなく、それぞれの音に対して適した設定を行うことが大事です。
コンプレッサーを実際に使いながら、自分の作りたい音に近づけるよう設定してみてください。
では、この記事は以上になります。
あなたのお役に立てたら幸いです!